Sunday, September 16, 2007

土方巽「ゲスラー・テル群論(2)

ドイツ統一の精神として、ヒットラーが掲げたシラーの「ウィリアム テル」。2年後に、イスラエル空港での無差別乱射事件の際、パレスチナ過激派は「ウィリアム テルの精神でそれを行なった」と宣言。
アメリカの『裸のランチ』の詩人、ウィリアム・S・バロウズは、酒に酔った勢いで“ウィリアム テルごっこ”をし、誤って妻を射殺したのだが、似たようなかたちで土方巽が台本の「神ともテロリストともつかぬ一人の男」を演じる。分裂した1967年の世界の様相が投射され、意識化され、断片化された行為がランダムに“カット・アップ技法”で進行してゆく。

客席の中に配置された“ピンポン台”上の、穴を穿たれたタイツ姿で踊るケイ・タケイの分裂症ダンス/そこに、しゃがみこむ裸形の土方巽/肩から背にかけて、バケツいっぱいの赤い塗料が注ぎ落とされる/立ち上がった土方は舞台に上り、緞帳前で悲劇性の肉体の踊りを演じる。ジョン・レノンの「イマジン」が流れる/踊りが陶酔状態に入り、キリストのY字型の十字架の姿体でそのまま緞帳に寄りかかる/背の塗料が真っ赤に染まったまま西陣織の緞帳が上がる(これが草月ホール側と問題になる)/ステージ奥に、赤いリンゴを頭上に載せた女の子が立っている/土方が舞台袖から銃を取り出してきて、女の子の頭上のリンゴを狙って乱雑に銃を打つ/女の子は無様に床に倒れる/ファッションモデルが出てきて無音でコースのパターンを演じる/客席の通路をステージに向ってガラガラと音をさせながら、小刻みな足取りで石井満隆がやってくる/見ると、裸の満隆の頸に紐で空き缶が下げてあり、その中で小石が動く音なのだ/通り過ぎる満隆の背には「ああ、忙しい、忙しい!」という看板が懸かっている/大野慶人が舞台下手でボンゴの音を激しく打つ/写真家西宮正明が小学生時代のクラスの記念写真を投影する/土方が再び登場、ゴシック風の鋭角的な舞踏。青江三奈の「雨のブルース」が流れる/小杉武久の音/女装したチャイナ服の笠井叡が踊るシーンがつづく。ーーー/。

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