Thursday, July 07, 2016

池内 了氏の文


     日本という国の
     再点検を。
     2016年の勝敗が
     日本の分岐点になる
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     池内了(天文学者・宇宙物理学者)

 今、おそらく日本の現状について、心ある人は誰も楽観していないだろう。このまま行けば、軍国主義が日本を覆い尽くし、憲法が改悪されて立憲主義・平和主義の支柱がなぎ倒され、アメリカに従属して世界に自衛隊という名の軍隊が派遣されて、日本は戦争に巻き込まれる。そんな想像が現実化しそうな雲行きであるからだ。

 それを阻止できるかどうか、2016年は決定的な年になるのではないだろうか。私たちは性根を据えて安倍内閣と対決しなければならない。それができなかったら、日本の行く末に対して取り返しのつかない禍根(かこん)を残し、これから育っていく子どもたちの未来を奪うことになるのは確実である。このことを真正面に見据えて、現代の動きを逆転させるための運動を構築すること。それを今年の私達の最大の目標とすべきなのだ。
 しかし、なぜ日本がこのような状態になったのか、そのことを真摯に検証する必要がある。アメリカとの同盟関係を強化するなかで、集団的自衛権行使容認の閣議決定という小手先の策で戦争法を成立させ、憲法無視の軍事化を推進し、武器輸出やTPPや税制改革や原発再稼働などによって大偉業優遇をいっそう強め、消費税の増税や福祉・年金切り捨てによって庶民の生活を脅かし、特定秘密保護法や盗聴法やマイナンバー制で国民の監視と情報収奪を強め、沖縄県民の願いを踏みにじって辺野古への米軍基地移転を強行する。そんな安倍内閣の数多くの悪政が罷り(まかり)通っている。日本国民が、それを容認してきたのも事実である。さらに、防衛費が5兆円を越える一方、日本の借金が1000兆円を上回る事態になっている。原発の放射性廃棄物と同様、私たちは厄介なものは後世に先送りすることを平気でおこなっているのだ。
 これらを考えてみれば、今私たちが採るべき方向は、私たちの生き様を再点検しつつ、未来世代への責任という倫理的な観点で社会と政治に対決することではないだろうか。そのような厳しい目で安倍内閣のやり方に厳しい批判を加えて退陣を迫るとともに、具体的に今年の参議院選挙(自民党は憲法改悪・軍国主義化を一気に実現すべく衆参同時選挙い
を目論んでいるようだが)で、自公政権にストップをかけることである。その勝敗が日本の大いなる分岐点になることは疑いない。
 現在の政治趨勢を逆転させる、それこそが16年を生きる君たち、私たちの最重要の課題ではないだろうか。

 いけうち・さとる
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1944年生まれ。理学博士。名古屋大学名誉教授。近著に『科学・技術と現代社会 上・下』(みすず書房、2014年)、『科学はどこまで進化しているか』(祥伝社新書、2015年)など。
     上の記事は『DAYS』2016年2月号より引用させて頂きました。

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