Tuesday, August 07, 2007

アントナン・アルトー Antonin Artaud

アントナン・アルトーとの精神的な出逢いは、戦後間もなくと言ってもいい頃だった。当時私は旧姓高校の“文丙”というフランス語専攻のクラスに在籍していたが、妙なことがきっかけで演劇部に入ることになり、事のついでに開校したばかりの舞台芸術学院の夜学にも通うことになる。それで紀伊国屋書店を通じてコポー、デュラン、バローなどの演出台本をフランスから取り寄せて読んでいたのだが、やがてバローの『Reflexion(回想)』という本を注文したのである。それは著者であるジャン・ルイ・バローが自分の演劇の経歴と俳優術について語っているのだが、シャルル・デュランの下で学ぶところから始まって、エチエンヌ・ドゥクルーに誘われていっしょにマイム術を研究し、やがてアントナン・アルトーと出会い、アルトーが独自の呼吸法や演技術を彼に伝授する段階で、この不思議なアルトーという人物の霊感に打たれたのだった。

その後、私はクラシックバレエにまで足を踏み込み、パリのレオ・スターツのコンセルヴァトワール(ベジャールの出身校)に留学することになるのだが、ついでに日本にまだ知られていないマイム技術を仕入れることも必要かと思い、エチエンヌ・ドゥクルーの学校にも通うことになる。そして、バローの演劇を観ながらも、すでに亡くなっていたアントナン・アルトーの足跡を辿ることを忘れなかった。私は、もし“身体哲学”というものがあるとしたら、また、東西の「身体メソッド」を比較する学問があるとするなら、その出発点としてアルトーの身体観から始めようと決意した。帰国後、私はアルトー館という名前でプロデュースし、アルトー館という研究所も創った。

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